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最高裁判所第三小法廷 昭和60年(オ)347号 判決 1985年9月17日

上告人

東宝帽子株式会社

右代表者

土肥孝司

右訴訟代理人

福田照幸

福田治榮

被上告人

江守栄

被上告人

江守秀次

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人福田照幸、同福田治榮の上告理由について

民訴法一六九条二項所定の送達を受けるべき者の就業する場所とは、受送達者が現実に業務についている場所をいうと解するのが相当であるところ、原審の適法に確定したところによると、被上告人らを受送達者とする所論の訴状副本、口頭弁論期日呼出状は昭和五八年八月二五日に、第一審判決正本は同年九月一〇日、いずれも東京都渋谷区元代々木五五番七号桜苑マンション五〇一所在の日本羽毛販売株式会社(以下「訴外会社」という。)の事務所を被上告人らの就業場所とし、同所において、訴外会社の取締役である前田毅に対して交付するいわゆる補充送達の方法により送達が行われたものとされているが、被上告人らは、名目上訴外会社の取締役に就任しているものの株式会社ケット科学研究所に勤務している者であつて、訴外会社からは給与、報酬等何らの金員の支払を受けたこともなく、また前記事務所に出勤したこともないというのであるから、右事務所は被上告人らの就業する場所に当たらないものというべきである。したがつて、前田毅に対する前記各送達書類の交付につき同法一七一条二項の規定を適用して被上告人らに対し有効な送達がなされたものと認めることはできないから、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官長島 敦 裁判官伊藤正己 裁判官木戸口久治 裁判官安岡滿彦)

上告代理人福田照幸、同福田治榮の上告理由<省略>

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